シェアリングエコノミーとは、インターネットを介して個人と個人・企業等の間でモノ・場所・技能などを売買・貸し借りする等の経済モデルの総称です。モノだけではなく、スペース、スキル、時間などあらゆる資産を共有する「シェア」の考えや消費スタイルのことです。最近では、欲しいものを購入する以外にも、必要な時に借りればよい、他人とシェアするというような考えを持つ人が増えつつあり、そのような人々のニーズと所有物を提供したい人々を引き合わせるインターネット上のサービスが注目を集めています。
そこで今回は全国の男女約2万人を対象に「シェアリング/レンタルサービス*」について【買う・借りる側】として利用することをメインに4つの分野ごと(モノ、モビリティ、スキル、空間・場所)の認知や利用状況、また利用・非利用意向の理由などを聞いてみました。また、年代別に価値観や意識の違いがあるのかどうかをみていきましょう。
◆Topics◆
1.認知では衣類・日用品などの「モノ」関連の分野が最も高く約7割2.利用経験では「モノ」関連の分野が最も高い結果。特に20~30代の利用経験は約半数
3.利用したことのあるサービスは圧倒的にフリマサービス「メルカリ」が1位、次いで「ラクマ」
4.利用意向は利用経験率に対して拡大傾向、特に20~30代での広がりに期待
5.利用したい理由は「コスパ」「利便性」一方、「知らない人とのやり取り」「責任所在が不明」などが懸念点に
6.今後どんな人に広がっていく?サービス利用経験者と今後の利用意向者の傾向
1.認知では衣類・日用品などの「モノ」関連の分野が最も高く約7割
「シェアリング/レンタルサービス」の分野別の認知について聞いたところ、衣類や日用品などの売り買い/貸し借りをする「モノ」関連のサービスでは、全体の約7割の人が認知している結果に。フリマサービスなどの普及によって身近なものとして浸透していることがうかがえます。次いで認知が高いのは「モビリティ」関連のサービスとなっており全体で3割台となっています。
年代別にみると、いずれの分野も20~30代の認知率が他の年代の割合に比べて高い結果となっています。
2.利用経験では「モノ」関連の分野が最も高い結果。特に20~30代の利用経験は約半数
では、【買う・借りる側】の利用経験をみていきましょう。サービスの認知同様に「モノ」関連のサービスを利用したことがある人の割合が最も高く、全体で3割台という結果となっています。一方、「モビリティ」や「スキル」「空間・場所」関連のサービスにおいては1割未満となっており、「モノ」関連のサービスに比べると利用経験率は高くない状況です。
また、年代別では「モノ」関連のサービスでは20~30代が約半数、「モビリティ」や「空間・場所」関連のサービスでは20代が約1割、「スキル」関連のサービスでは年代で大きな差はありませんが30代の利用経験が若干高い傾向となっています。
3.利用したことのあるサービスは圧倒的にフリマサービス「メルカリ」が1位、次いで「ラクマ」
「シェアリング/レンタルサービス」の中で【買う・借りる側】として使ったことがあるサービスを利用経験者に聞いたところ、「モノ」関連のサービスとして「メルカリ」が圧倒的な利用経験率で1位に。「メルカリ」の利用者を年代別でみると、10~30代で8割を超えています。次いで「ラクマ」が2位にランクイン。こちらの利用者は30代の利用経験率が他の年代に比べて高く約3割であることがわかりました。TOP2のサービスはフリマサービスとなりました。
3位は「モビリティ」関連のサービスとしてカーシェアリングサービスの「タイムズカー」がランクインしています。20代の利用が1割超えで最も高い結果となっています。しかしTOP2と比べると利用している人は少なく1割以下という結果でした。「空間・場所」関連のサービスからは駐車場サービスとして知られる「akippa」が4位にランクイン。また、「スキル」のサービスからは「くらしのマーケット」が6位に入っています。
4.利用意向は利用経験率に対して拡大傾向、特に20~30代での広がりに期待
「シェアリング/レンタルサービス」の中で【買う・借りる側】としてそれぞれの分野の利用意向について聞いてみました。すべての分野において「利用意向あり」の割合は、前述の利用経験率と比べて拡大がみられました。
年代別でみると、いずれの分野のサービスにおいても20~30代の利用意向が高いことがわかります。「モビリティ」「スキル」「空間・場所」関連のサービスでは20~30代の利用経験率は1割前後でしたが、利用意向の拡大がみられました。
また、「シェアリング/レンタルサービス」の中で【買う・借りる側】として、「利用意向なし」と回答した割合をみてみると「モノ」については比較的、低い割合となりましたが、「モビリティ」「スキル」「空間・場所」では1割強と一定の割合がみられました。
年代別では、60代以上は「モノ」以外の分野では「利用意向あり」に比べて「利用意向なし」のほうが割合が高くなっています。また、「モビリティ」や「空間・場所」では40代以降で「利用意向なし」の割合が10~30代に比べるとやや高くなっています。
5.利用したい理由は「コスパ」「利便性」一方、「知らない人とのやり取り」「責任所在が不明」などが懸念点に
「シェアリング/レンタルサービス」の中で【買う・借りる側】としての利用意向の有無をみてみましたが、「利用したい理由」「利用したくない理由」にはどのようなものがあるのでしょう。それぞれの傾向をみてみましょう。
利用したい理由については「価格の安さ」や「利便性」がいずれのサービスでも上位に挙げられていました。「スキル」関連サービスでは、2位に「利用することによって自分の時間が作れる」といった理由もランクインしていました。
利用したくない理由としては「トラブルや弁償への不安」「提供者がどのような人かわからない」といった内容が上位となっており、利用意向なしの人にとってこのような点が抵抗感につながっている傾向がみられました。
6.今後どんな人に広がっていく?サービス利用経験者と今後の利用意向者の傾向
最後に今後「シェアリング/レンタルサービス」がどのような人に広がりをみせていくのか、サービスの分野別に「利用したことがあって、今後も利用してみたい人」と「利用したことはないが、今後は利用してみたい人」で傾向をみてみましょう。
「モノ」関連のサービスでは「利用したことがあって、今後も利用してみたい人」は男性よりも女性の割合が高く、特に20~40代女性の割合が高い結果に。利用経験率の高いサービスとしては圧倒的に「メルカリ」が1位で約9割の人が利用しています。利用したい理由は、「実際のお店やネットショッピングよりも安価」が1位でした。次いで「今は手に入らない/入りにくいものが見つかる」となり、この理由は利用経験がある人のなかで上位となっています。
「利用したことはないが、今後は利用してみたい人」はこちらも女性の割合が高く、特に女性60代以上でやや高い割合となっています。現在は、20~40代に浸透をみせている「モノ」関連のサービスが今後、上の年代にも広がっていくことが予想できます。また、今後利用したい理由として、「必要な時だけ利用できるので、余計なモノを持たなくてよい」と回答した割合がサービス利用経験のある人より高く、モノを所有しないところに魅力を感じている人もいるようです。
「モビリティ」関連では、「利用したことがあって、今後も利用してみたい人」は全体で男性の割合が顕著に高い傾向で、特に20代男性の割合が高くなっています。利用経験率の高いサービスとしては「タイムズカー」が高く、約6割となっています。「出先や旅行先でも使えるから」や「短い時間からでも利用できる」などの利便性が利用したい理由の上位に挙がっています。
「利用したことはないが、今後は利用してみたい人」は、全体で男性の割合が高く、40代男性の割合がやや高い傾向にあることがわかりました。今後利用したい理由では、利用経験のある人と同じ理由が挙がっており、今後はさらにサービスが浸透していく可能性が考えられます。
「スキル」関連のサービスで「利用したことがあって、今後も利用してみたい人」は全体で女性の割合が高い傾向です。男女年代別では30代男女の割合が高く、また、乳幼児・未就学児のこどもを持つ人も他の分野に比べて高くなっています。利用経験率の高いサービスは「くらしのマーケット」が約4割となっています。利用したい理由では「能力の高い人のスキルを提供してもらえる」や「業者に依頼するよりも安価」ということが利点のようです。
「利用したことはないが、今後は利用してみたい人」は全体で女性の割合が高く、20~40代女性でやや高い傾向となっています。
今後利用したい理由として「利用することで自分の時間が作れる」という理由が挙がっています。乳幼児・未就学児のこどもを持つ層の割合が高めなこともあり、なかなか自分の時間をつくるのが難しいライフスタイルの人にとって魅力のあるサービスなのかもしれません。
「空間・場所」関連のサービスで「利用したことがあって、今後も利用してみたい人」は全体で男性の割合が若干高く、男女年代別では特に20代男女の割合が高い傾向となっています。利用経験率の高いサービスとしては「akippa」「Airbnb」が上位となっており、20代男女にとっては旅行や駐車場予約など生活の中で取り入れやすい年代なのかもしれません。
利用したい理由としては「利便性」や「コスパ」はもちろんのこと「必要な時だけ利用できるので維持費等の費用を抑えることができる」が挙がっています。
「利用したことはないが、今後は利用してみたい人」は全体で男女の差はほとんどなく、男女年代別では、20代男性で割合がやや高い傾向でした。現在利用していない人にとっては、「借りる/買うよりも、安く部屋などの空間を使うことができる」ということを利点として感じているようです。空間・場所のサービスについては、いずれも共通して「利便性」「コスパ」といった部分が魅力となっているようです。
シェアリングエコノミーがどのくらい私たちの生活に浸透してきているかをみてきました。 「シェアリング/レンタルサービス」を利用している、していないに関わらず、今後の利用意向や利用したい理由から今後の顧客/潜在顧客のニーズの傾向が少しわかるのではないでしょうか。所有するからシェアする、必要な時にだけ必要なモノを利用するなど新しいサービスとしての経済モデルの広がりがみえてきました。今後の「シェアリング/レンタルサービス」の動きに注目していきたいですね。